写真と、カメラと。

写真とカメラと過ごす日々と、旅のこと。

プロに聞く。

外出を控えているがゆえに、台所(あ、キッチン)に立つことが増えて、ふと思い出すことがある。
食器洗いのスポンジのこと。
スポンジの使い方のこと。

2年半前に、ある企業の社内フォトコンテストの選考で出張に出かけた時のこと。
カメラ内の色設定を構築・設計するようなベテランの方と同席した朝食時間に、二人とも食事をしながらお互いがすこし離れた席からTVを見入ってた。
彼はいわゆる定年退職後のシニア社員だ。

朝のTV番組なので、ある程度主婦層向けで、それ相応の内容だということは想像できると思うのだが、その日の内容はスポンジの使い方だった。

ー使い方なんてあるのか?

と、思うのが普通でしょう。どこにでもあるあの台所用スポンジだから。
二人ともそう思いながら見ていたことは間違いないのだ。

TVの中で見たものは、スポンジと呼ばれる柔らかい面と、ちょっと固いナイロンたわしになっている面を使い分けるとより良いというもの。

ーまぁそうだよね。


スポンジ面は洗剤を着けて水を含ませ、泡立てるための面

そして、泡立てたらたわしの面を使って洗うのだという。どんな食器も。

 

ーえ?洗うのスポンジじゃないの? 二人ともそう心の中で思ってました。

実際にガラスやら、タッパー類や、お皿(陶器)などなどゴシゴシ。
全く傷はついていなかった。しかも新品で試していた。

二人でいたく感心したものだ。
ベテランの大先輩は「なんかすごいね、知らなかったよねぇ。やっぱり専門家のプロに聞くのはちがうねぇ。」と。

ーうんうん。

そんな、ちょっとした身の回りのことでさえ知らないでいる。ということに私たちは驚いたが、私はさらに大先輩の姿勢に学んだ。

さもすると、「自分には関係ないことだ。」と受け止めがちだと思う。
けど、彼は(それぞれ)専門分野に生きていたってそれ以外のことは知らないことがたくさんあるよね。という柔軟な受け止め方である。

そんな彼だからこそ、今でも求められる存在なのだろう。
それこそが学ぶということなんだ ということ。

人は、自分自身が知り得たいことばかり求めたり、高性能・機能ばかりを求めたり、関係ないと距離を置いたりするものだ。年齢や職業の違いを盾に学ぶことを拒絶したり(している)人もいる。
ほんのちょっとしたことや、基本を知ることが自分の気持ちを豊かにしてくれるのに。

 

写真やカメラも同じだと思う。

私はそれ以降、スポンジの使い方を改めた。



※余談ですが、かの亀の子だわしは実家の近くで作られているブランドです。