呼ばれる場所に旅をする。
思い立っていく旅はいい。
と、他のコラムで書きましたが、何はともあれ、行きたいと思っているし、行きたいときに行けるなら行かなくちゃ!
というのが心情です。
そんな場所にはたいていの場合「呼ばれてる」と感じています。
写真家という仕事で活動できるようになり、ある程度時間の調整もできるようになったのがとても大きいのですが、旅は以前よりもさらに好きになりました。
そんな私も、かつて30代の初めの頃まではひとり旅なんて怖くてできなかった。
3年位前まで、飛行機なんて恐ろしくて乗れなかったんです。
今やまったくそう見えないかもしれませんが、発達した情報社会という背景が格段に利便性を上げてくれました。そして、仕事だから行かなくちゃ。という後には引けない状況も後押ししてくれたのは間違いありません。
どこにいても人とコミュニケーションを交わすのが好きなのであまり言葉の壁も気になりません。
こちらが思い悩むよりも、話しかけた方が旅はどんどん楽しくなる。
それと、スマートフォンという文明の利器は使わないと損です。
そんな風にしてひとり旅も板についてきたのですが、最近は時に〝この楽しさを共有したい〟とも思ったりします。
そして、仲間がいるとより心強いものです。
中でも伊豆大島は、私にとっては縁もゆかりもないところでした。
始めは仕事を通じた出会いでしたが、ツアー企画や、ツアー参加者のみなさんが「写真」というひとつの楽しみ方を通じて、どんどんつながっていく大島の人たち、島好きな仲間たち。
いわゆる慣れ合いではなくて、楽しい集まりだけでなくて、内輪的な盛り上がりではなくて。
「島に行きたい」
「ぜひ行ってもらいたい」
「来てもらいたい」という、
同じ目的感がある、強い思いが感じられる。というのが私の印象。誘致というには安易すぎて。
わたしは東京都としてこの場所を忘れてはならないという思いでいます。ずっと。
行くたびに故郷のように顔見知りが増えるのがとてもうれしいです。
解放される空気と温かい気持ちに包まれる場所に迎えてくれる人たちがいて、季節ごとに違う姿を見せる島。また会いに行きたいと感じさせてもらえる不思議な力を持つ場所だな、心強いな、と行くたびに引き寄せられる思いでいます。
「行くと必ずまた行きたくなる。」
皆が口にするので間違いない。
ぜひ一度は訪れてください。
なんなら、やっぱり写真旅。
一緒に楽しみましょう。
写真と対峙する
初めて距離感をもって自分の写真を客観的に見られるようになる。
画像だったものが手に取れる形や、空間(ギャラリーなど)と相まって伝わるものになる。
それがプリントの良さです。
プリントしてはじめて作品が生きてくる。歩き出す。という感覚。
わたしのお教室や撮影会ではほとんどの場合、生徒さんたちにプリントしていただき講評をしていますが、プリントしてみると「やっぱりこれは自分でもいいと思えなかった。」と自分の写真を客観的に評価できるようになってきました。
それは写真のレベルには関係なく、誰もが抱く感覚です。
加えて人の目を介して初めて自分の思いが伝わるものになっているかを確認できるのです。
手元のスマートフォンやPCの中とは全く異なる見え方になって、さらに、自分の想いから距離が生まれたときに見えてくる写真と対峙する時間。
非常に重要な要素です。
この時間があり、また撮ることに返っていく。
以前プロラボ(プロのプリンターが写真一枚一枚を丁寧に手作業で仕上げていく現像所のことです。)の方がおっしゃっていた印象的だった言葉が、
「今活躍している写真家さんはやっぱりプリントを大切にしてるよね。」
ということ。
そう、わたしの周りの写真家さんたちは皆そのようにプリントを大切にしています。今、スマホ写真の中にある写真も、PCに眠っている写真も、一度プリントして見つめ直してみることをおススメします。お金かかるじゃん! そんな声が聞こえそうですが、一枚数十円~100円程度のプリントだって大きな価値がありますよ。
また、プリントといってもその方法は様々。デジタルカメラでの撮影(あるいはデジタイズ)によってプリント表現の幅は格段に広がりました。今、プリントできない素材ってほとんどないんじゃないかな。
ということで、最後は宣伝になってしまいますが、
プロラボ イーストウエスト代官山のご協力により、2019年4月1日(月)~12日(金)まで写真展を開催します。
スマートフォンで撮影した画像を写真印画紙以外の多様なメディアにプリントして展示。身の回りで目にするアレコレにプリントされ、展示の仕方も自由度が高いので表現方法の可能性としてぜひご覧になっていただきたいです。
スマホでもここまで出来ちゃう?!驚きとともに、プロラボを利用したことのない方もご来店のきっかけにぜひ。
【写真展】Smart Phone + Graphy □(SQUARE) | 写真家こばやしかをる / エンジョイフォトルーム
誰もが手にしているシンプルなカメラで撮影・加工した二人の写真家による日々の記憶です。
会期:2019年4月1日(月)~12(金)
時間:10:00~18:00(月曜~金曜)10:00~17:30(土曜)
※会期中7日(日)は休業
会場:イーストウエスト代官山
住所:〒153-0061東京都目黒区中目黒1丁目1-71
電話:03-3711-7521
■関連イベント
「スマホdeフォトウォークin代官山」
4月6日(土)14:00-15:45/16:00~ ギャラリートーク
参加費:5,000円(作品集のお土産付き)
参加者:20名先着順
プリントのことは話すと長くなってしまうので、また機会を見つけていろいろと書きますね。
GRに思うこと
今、皆の熱が上がっているところでRICOH GRのことを。
私とGRの出会いは1996年の発売当時です。
当然ながら当時はフィルムカメラ。
GR前身のRICOH R1 という超薄型ボディとグリーンというボディカラーの斬新さにとにかく驚いたものです。「すげー」の一言でした。
その当時のコンパクトカメラといったら35mmフィルムパトローネを丸っとっ包み込むようなデザインがほとんど。
しかもズームレンズ搭載というのが主流でした。
一眼レフは持てないけど、旅行や記念撮影にもっていくから家に一台はあったカメラ。そんなイメージです。正直言ってカッコよさのかけらもなかった。
そういう意味では、R1との出会いは今のGRシリーズよりもかなり衝撃的でした。( R1でどんな画が撮れたかというのは残念ながら覚えていないんですが。)
その2年後くらい、CONTAX Tシリーズをはじめとした高級コンパクトカメラの全盛期になるわけです。そこに登場したのがリコーGR1これまたスマートなデザインで「一線を画した」というのがリコーのカメラの印象です。
今でもそのデザインを受け継いでいるのはすごいこと。
GR1で撮影された描写に対して〝カリカリ〟という言葉を使っていた。ということを思い出しました。
写る画が、シャリシャリ、ザラザラした感じ。といえば伝わるかな。
今でいうノイズではなく、フィルム粒子です。荒い粒状ということ。
用いるフィルムによってその描写も変わるから、皆フィルム選びにこだわっていたものです。
森山大道さんがこのカメラを愛用したのも納得できます。
あの頃の写真・カメラ雑誌ではよくこの手の作風を目にしました。
写真家がその時、その時のカメラを自分の作品に用いて表現していくというのはこの頃私自身が感じたことから変わっていません。
今やデジタルカメラの中にはメーカーの意図がたくさん盛り込まれていて、機能がたくさんありすぎて使えない、使いきれないという声も多いのですが、それをいかに自分の作品のための道具として昇華していけるかが問われているはずです。
同じカメラを皆が手にする。
その代表的なものはiPhoneですが、先日発売になったばかりのGRⅢもきっとそういった意味で「皆さんに新しい作品を生みだしてもらえたら」と考えられている気がします。
そして、カメラはきっと机の上でPCに向かうことよりもシャッターを押され、楽しんで使われることを望んでいるはず。
GRⅢの作品に多様性が生まれることを期待しつつ、わたしが写真家として、講師として、いつも願っていることです。
※二枚の写真はGR1で撮影したものです。
RICOH デジタルカメラ GRIII APS-CサイズCMOSセンサー リコー GR3 15041
- 出版社/メーカー: リコー
- 発売日: 2019/03/15
- メディア: Camera
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ごあいさつ
ご存知の方は改めまして。